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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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ガウス
今日4月30日は,史上最大の数学者と呼び名の高いガウスの誕生日です.裳華房の連載コラムではガウスが何度か登場しています. 第1回『数学書の読まれ方』で出てきた正17角形の作図は,ガウスによって発見されました. 第15回『平面に目盛られた数』では,ガウスが時代に先駆けて複素数の平面表示を考えていたことに触れました.名前こそ出しませんでしたが,第5回『素数定理を紐解く』で説明した Li(x) という関数に,真っ先に気づいたのもガウスです.



特にガウスを推すつもりがあったわけではないのですが,こうなってしまうあたり,やはりガウスの影響は大きいのでしょう.この機会にぜひお読みください.

第1回『数学書の読まれ方』
第15回『平面に目盛られた数』
第5回『素数定理を紐解く』

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コラム | 07:40:58 | トラックバック(0) | コメント(0)
余弦定理(続)
前回の続きです.(同じ式番号を使います.)前回は第一余弦定理と呼ばれる式


が,頂点から垂線を下ろすことで明瞭に分かることをみました.一方,通常(単に)余弦定理と呼ばれる次の式は,上と区別するときは第二余弦定理と呼ばれます.


今日はこの二つの余弦定理の関係を考えましょう.

●   ●

(4), (5), (6) は証明できているので,これを使って(1), (2), (3) が示せないか?この問いが前回の結びでした.ひとつできれば後は同じでしょうから,


だけに集中しましょう.
から (1) を示したい.では‥?


示したい (1) に cos B はありませんから,(4), (5), (6) から cos B は消去できるといいですね.だったら (4) × a - (6) × c で,cos B を消去してみましょう.同じく cos C も消去したい.こちらは (4) × a - (5) × b で可能です.このふたつの操作はまとめることができ,


になります.その結果といえば


オヤ,b2とc2を移項すれば (1) ができました.(2) と (3) も同様です.

●   ●

逆に,(1), (2), (3) から (4), (5), (6) を導くこともできます.それは皆さんにお任せしましょう.ちなみに,コサインでなくサインの方を考えると,サインは斜辺分の対辺なので,次のような関係になります.

これを踏まえて前回も使った垂線の図をもう一度じっと見てみると‥

垂線の長さAHは,c sin B でもあり b sin C でもあります. c sin B= b sin C から


が出てきます.(ただし前回同様,B か C が鈍角のときは,別に考える必要があります.)同様に考えて,結局


となり,正弦定理の式が出てきました.(通常,正弦定理とは,この等しい値が外接円の直径になることも合わせて書かれます.)

頂点からの垂線とは補助線としてはかなり単純に思えますが,ここから余弦定理・正弦定理の双方が導かれるとなると,なかなか趣深いとも言えそうです.

コラム | 09:11:01 | トラックバック(0) | コメント(0)
余弦定理
三角形ABCについて,辺の長さを


のように a,b,c とおくと,


が成り立ち,余弦定理とよばれています.(注:余弦はコサインの日本語です.)が,これはより詳しく,第二余弦定理と呼ばれることがあります.その場合,第一余弦定理とは次の


を指します.なぜ第二余弦定理の方がメジャーで,称号「余弦定理」を獲得しているのか?端的に言えば,それは実用性の違いです.例えば aを求めるには,(1) なら b,c,Aの3つから計算できますが,(4)ならb,c,B,Cの4つが必要です.実際の計算に第一余弦定理を使うことはあまりありません.

では第一余弦定理の存在意義は何か?今日はこれをお題にしてみます.

●   ●

第一余弦定理のよさは何か.一つには,式の意味の分かりやすさがあります.コサインの定義を思い出しておくと,これは直角三角形で『斜辺分の隣辺』でした.だから,斜辺の長さをrとすれば,角θの隣辺の長さが r cosθ になります.

(ちなみに対辺の長さはr sinθ.)では(4)は何を意味するか.次のようにAからBCに垂線を下ろしてみましょう.

よぉく図を見てみると‥


そう,長さ a の線分BCを垂線の足のところで分けると,それぞれの長さは c cosB, b cosC ですね.これで a=b cosC+c cosB となって,(4)が証明できました.(注:ただしこの証明は,B, C の一方が鈍角のときは少し変更しなければなりません.垂線を下す方針は同様です.) (5), (6) も同じです.

●   ●

証明が簡単ならそれは当たり前の式でしかない?のかも知れません.でも,この(4), (5), (6) からは,第二余弦定理である (1), (2), (3) を導くことができます.どうすればよいでしょうか?(次回に続きます.)


コラム | 09:57:52 | トラックバック(0) | コメント(2)
方向ベクトルと法線ベクトルの哲学的(?)考察
以前の連載(点と直線との距離の公式:前編中編後編)で、


の法線ベクトルが

であることを使って、点と直線の距離の公式や、円の接線の方程式が簡単に証明できることを説明しました。題名の「哲学」は冗談ですが、今日は、なぜ法線ベクトルが有効になる場面があるかを、一歩立ち戻って考えてみたいと思います。

●   ●

一言でいえば、方向ベクトルと法線ベクトルは直線を規定する重要な2つの属性で、どちらがより基本的かはその直線による、となります。

そもそも直線ってなんでしょうか?身の回りにある直線から考えてみましょう。まっすぐに敷かれたレールの上を走る電車を想像してください。このときは、レールという直線の方向ベクトルが電車の走る方向です。レーザー光線も、その方向ベクトルは光が進む方向にほかなりません。このような直線では、方向ベクトルが基本になっています。でも、そうでない直線もあります。今度はたとえば、海の彼方に見える水平線を想像してみてください。なぜ水平線は直線になっているのでしょうか?これはその水平線の方向が重要だというよりは、重力の影響を受けて、重力のかかる方向に対して垂直に水が広がってできる線だと考えたほうがよいでしょう。水平線は、重力の方向が法線ベクトルになる直線です。

身の回りにある直線は、だいたいは、方向ベクトルか法線ベクトルによって規定されています。たとえば道路に引いてある白線はたいてい、人や車の進行方向に沿うものか、または停止線のように、進行方向に垂直になっています。重力に垂直な方向に進むと重力の影響を受けないので、ボールや丸太は水平にコロコロ転がります。逆に木や電柱は、傾かずに重力の方向に直立することで、重力をバランスよく受け止めることができます。

ここまで考えると、点と直線の距離の公式や円の接線の方程式で、法線ベクトルが有効な理由がはっきりするのではないでしょうか。これらの問題では、直線の方向ベクトルよりも法線ベクトルの方が基本的だからです。高校の数学では、直線を、「傾き」すなわち方向ベクトルによって取り扱う方法に重点がおかれています。まずひとつの方に集中して定着を図るというなら、教え方としてはもちろんひとつのありうる考え方です。しかし、本来これはどちらか一方でよいというものではなく、問題によってどちらがより基本的かを考えることが(たとえば大学の数学や物理でも)大切です。

両方のベクトルと関係する直線もあります。たとえばノートの横罫線を考えてみると、その罫線に沿って左から右に字を書いていきますが(罫線の方向ベクトル)、全体としては上から下に書いていきます(罫線の法線ベクトル)。そもそも道も、通る人には方向ベクトルですが、渡る人は法線ベクトルに進みますよね。身の回りにある直線に少し思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。


コラム | 08:34:49 | トラックバック(0) | コメント(0)
点と直線との距離の公式(後編)
前回は、

に対し、そのxとyの係数を取り出して作ったベクトル


が ℓ の法線ベクトル( ℓ に直交するベクトル)になっていることを確かめました.今回はその応用をみてみましょう.

●   ●

【1】点と直線との距離の公式
点P(x1,y1)から直線 ℓ : ax+by+c=0 におろした垂線の長さdを求めてみましょう.


垂線の足をP0とするとPP0は法線ベクトルに平行なので,

と書けます.よって

とP0の座標が表せます.P0は ℓ を通るから



となりました.求める長さは

です.

【2】円の接線の方程式


の上にP(x1,y1)をとり,CのPでの接線を ℓ とします.


ℓ の式を求めてみましょう. ℓ がOPと直交していることから,


は ℓ の法線ベクトルになります.よって ℓ の式は


と書けます.これがPを通ることから

と c が決まり, ℓ の式が求まります.

【3】空間内の平面の方程式
ここまでの話はすべて,xyz空間内の方程式


の話に一般化できます.これは
を法線ベクトルにもつ平面になる,というのが出発点です.ここから先は皆さんにお任せしたいと思います.


コラム | 08:56:43 | トラックバック(0) | コメント(0)
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