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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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指導者と学習者の人数比
夏休み、子供が短期の体操教室に通っている。送ったついでに少しだけ観覧席に座った。全部で30人ぐらいの子供がグループに分かれ、4人のコーチにそれぞれ指導を受けている。それを見ているうちふと、小学3~4年生ごろに自分が体操教室に通っていた記憶が蘇ってきた。

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通ったきっかけは、逆上がりができなかったことらしい。ひけらかせるような過去ではないのだが、ずっと体育が「苦手」だった私は、短距離走も長距離走も、鉄棒も、とにかく何をやってもできない方にいた。親はそれを気にしていて、私が学校で「逆上がりができない子」に区分されてしまったとき、遂に通わせる決断をしたようだ。

学校が終わった後の夕方に始まるその教室は、英才的な教育の反対で、私のような、どちらかというと運動の苦手な子供たちが来ていた。いろんな学校の子がいるが、いかにも得意という子はいない。わざわざ通うからには非常に得意な子がさらに能力を伸ばしに来るのでは、と想像していた私には、これはちょっと意外に映った。もう一つ、普段と違ったのは、できないことが特に否定的なものとはみなされないことだった。この空気感は当時の私にはかなり目新しく不思議なもので、夜に体育館の中を照らした天井の白い光のややミステリアスな雰囲気と相俟って、今も印象に残っている。

ゴールを定められた子供たちは、今どこまでできていて次のステップは何かをコーチに判断され、そのステップの達成を目指し課題に取り組む。できなくても怒られたり咎められたりすることはない。(自由時間の遊びで羽目を外したときは怒られる。)何か月か通ううち、逆上がりもできるようになり、まただんだん跳べるようになってきた跳び箱が楽しくなった。バスケットとかマットとか、他にもいろいろ経験した。自分が「苦手」ということを考えなくてよいのが非日常的で妙な気分だった。相変わらず「得意」にはならなかったが、1年半ぐらいで、ずいぶんマシ、「平均程度」になった頃、別の習い事との兼ね合いで辞めたのだろうか。コーチはやはり何人もいて、コーチ一人当たりの子供の数は10人程度であったと思う。

●   ●

子供の体操教室を見学していると、子供達の表情はみな生き生きしている。そして、他人と自分を比べていない。できないから肩身が狭いとか、一番できるから得意げ、というのがない。コーチに課題を与えられ、一人ずつ声をかけてもらって、それをやってみようとして、まぁ時に違う動きになっちゃってる子供もいるけど、みんな楽しそうに取り組んでいる。なんか羨ましいな、と思う。今の学校の授業を見学したことはないが、私の受けた学校の体育の授業とは違う。

身のこなし方などの実際の技術的な指導のことを考えると、根本的にはこれは、大人一人あたりが見る子供の人数の問題であるように感じられた。この体操教室では、体育の指導を専門にしている大人が、一人あたり8人程度の子供を見ている。引き換えに学校の先生はと言うと、一人で30人とか40人の子供を見なきゃいけない。(しかも体育の指導だけ考えていればいいわけではない、全教科の指導が仕事だ。)これって、絶望的にムリゲーじゃないだろうか。せめて最低、『小学校には体育指導を専門とする先生が一人いて、体育の授業はその先生を中心にクラス担任の先生が補助する形で二人で指導する』とかじゃないと、あんまりなんじゃないだろうか。それでもまだ、人数比全然大きいのだけれど。

そして最後に、これは算数でも問題になっていると思う。人数が多いと、個々に目は行き届かなくなる。「苦手」が生まれるのは、個別指導なんて受けられもしない上に他人と比べられたり(しかも安易なやり方で)するからではないだろうか。学校の先生が悪いのではなく、どだいシステムに無理があって、子供がぞんざいに扱われているのではないか、ということです。

日記 | 21:43:54 | トラックバック(0) | コメント(0)
どんどん子供と学ぶ二度目の算数
台風が近づいているらしい。今日の天気はどうかな?ということで朝チェックしたら、兵庫県南部では多いと250ミリもの雨が降るとのこと!

さてここから子どもと算数。250ミリは何センチでしょう?と子供に聞いたら

『2センチ50ミリ』

とのこと(^^);ここから先、子供から出てくる答えはまさに間違いのデパートでした。以下、子供の間違いに基づいて、どのような点が難しいかを見てみましょう。

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まず、身の回りにあるものの長さを考えるとき、単位がメートル・センチ・ミリと3種類ある点が難しい。単位が3つあると、それらの間の関係も

1m=100cm
1cm=10mm
1m=1000mm

の3個があります。単位が2種類しかなければ、それらの関係は1つだけですが、関係が複数ある場合は、

(A) それらをすべて把握した上で、
(B) 今使うべき関係はどれであるかを正しく選ぶ

必要がありますが、難しいものです。

『2センチ50ミリ』は、250cm=2m50cm(センチとメートルの関係)との混乱ですね。そして、1cm=10mmがなかなか記憶から呼び出されません。近くにあった定規をよく見て何とか思い出しましたが、依然として1m=100cmの知識が思考を邪魔し、考える速度や精度を低下させています。50mm=5cmはできても100mm=100cmになったり、100mm=10cmができても、200mm=100cm (?) など、誤答続出です。

200mm=20cmになっても、次は250mm=70cmという間違いがでてきました。

250=200+50

と分けて、200mmは20cmに直したものの、その後50mmは直さずに20+50としたわけです。

いやいや、大変だ。いちいち単位をつけて考えるのも障害になっているようです。紙でもあれば書きながら説明したかも知れませんが、朝食のパンを食べながらだったので、全部会話で進めました。問題としてはイヤではなかったようで考えを修正し続け、大量の間違いの後に、250mm=25cmに辿りいて満足げでした。ちゃんちゃん。

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以前に、「450は10がいくつ集まった数ですか」というような問題を難なく解いていたので、今日の間違いっぷりはなかなか新鮮でした。結論としては、

(a) 250は10がいくつ集まった数ですか。
(b) 250mmは何cmですか。

という2つの問題には相当な難易の開きがあるということが分かりました。こういうとき大切なのは、指導者が決して焦らないこと --- 私はそう思います。(a) と (b) の違いを過小評価しないということでもあります。分かれば簡単ですが、分かるまでは難しいのだと思います。

日記 | 02:18:11 | トラックバック(0) | コメント(0)
『大学への数学』4月号
先日、月刊誌『大学への数学』からインタビューを受けました。


その記事が

『谷口 隆 植物の不思議,整数の不思議(前編)』

という題で、4月号に掲載されています。特に美しくもなければ輝いてもいない少年時代でしたが、それを無理に飾るわけでもなく、でもとてもよい記事にしていだきました。インタビューをしていただいた塩繁学さんに感謝します。

よければご覧ください。東京出版の『大学への数学』のページはこちらです。

日記 | 04:20:27 | トラックバック(0) | コメント(0)
サイモン・シンさんの受賞
数学セミナー2015-1以前,このブログの

  ・ サイモン・シンさんの『フェルマーの最終定理』
  ・ ワイルズさんを引き込んだもの

で,サイモン・シンさんの著作『フェルマーの最終定理』を紹介しました.この本は25ヵ国語に訳されるなど,世界的なベストセラーになったのですが,サイモン・シンさんはその後も持ち前の取材力を生かし,優れた科学の解説書を何冊も執筆しています.これが評価され,2016年全米数学会賞の一つである,JPBM Communications Awards を受賞しました.

最近ジュンク堂で見つけたのですが,数学セミナー2015-1去年の5月に,最新作

『数学者たちの楽園―「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち―』

の翻訳が出版されていました.これもそうとう面白そうです.アメリカで長年人気のアニメ「ザ・シンプソンズ」には,実はマニアックな数学のユーモアがいっぱい隠されてるらしい!?です.何ということでしょうか.興味のあるかたはぜひ.(アマゾンのページ新潮社のページ


日記 | 08:35:42 | トラックバック(0) | コメント(0)
『数学セミナー』2016年2月号
数学セミナー2015-1以前,月刊誌『数学セミナー』の国際数学者会議特集号で,マンジュール・バルガバ(Manjul Bhargava)さんのフィールズ賞業績紹介を書きました.今回,『数学セミナー』の2月号に再び寄稿する縁がありました.

平方剰余の相互法則と呼ばれる法則があります.2月号はこの法則の特集号です.私の記事も特集のひとつで,「平方剰余の相互法則とp進数」というタイトルで書きました.

『数学セミナー』 2016年2月号の目次

平方剰余の相互法則は,素数の間の論理的・数学的な関係を示すものです.これを経験的に発見したのはオイラー(1707-1783)ですが,ガウス(1777-1855)の詳細な研究によって,その底知れないポテンシャルが明らかになりました.素数の持つこのような秩序を究明することが,現在の整数論で一つの大きな主題になっています.

ガウスは平方剰余の相互法則を「整数論の基本定理」と呼んだそうです.基本定理であることが少しでもお伝えできれば,と思いながら記事を書きました.よろしければお読みください.

日記 | 19:51:06 | トラックバック(0) | コメント(0)
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