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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
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連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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習うときはタンタンと
しばらく前に仲間に言われたこと.

できあがった理論や,他人が研究で新しく編み出したテクニックを習得するときは,何てすごいアイディアなんだ!と驚嘆したり感動したりせず,「フーン,そうやればいいのか.」と冷静に,当たり前のように受け止めたほうがよいらしい.なぜなら,それをスゴイ理論だと思うほど,自分には難しくて使いこなせないのでは,という心理的な壁ができてしまうから.うーんなるほど,そうだなぁと思った.

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振り返ってみたら,小中高で数学を習うときもそうなっている.例えば『数直線』---直線上に実数を目盛るというアイディアは,実に偉大な,驚きの発明だったけれど,教えるときは「こうするんですよ」とやり方を説明するぐらいで,それはとてもスゴイことなのだとか,知性の不思議なはたらきですねとかはあまり言わない.これはきっと理にかなっていて,そんなことをあまり強調されると教わる側は心理的に萎縮してしまうだろう.

ほかに例えば,高校で扱う『積分法』など,実にサラリと話が進む.積分という言葉の意味にも触れず,いきなり「微分の逆を不定積分と言いましょう」から始まって,「定積分とは端点での値を代入した差です」と続き,「実はそれはグラフとx軸が囲む図形の面積なんです,じゃあどんどん面積を計算してみましょう」と来る.何だか,わけもわからないうちに新天地に連れてこられたみたいだ.

個人的には,こんな教わり方をしたために,物理法則が微積分を用いて記述されることを得心するのに余計に長い時間がかかってしまったような気もしなくはない.(ちなみにこの問題---微積分の意味が学びにくいこと---はある程度一般的で,現在も残っていると思われる.今後改善されてゆくことを望む.)しかし,ともかく1ヶ月もすればみんな平気な顔をして面積が計算できるようになる.いろいろと問題点や批判はあるだろうが,微積分学は歴史的に見ても多大の労苦・試行錯誤の末にできあがった理論で,一度で完全を期すのは難しい.何ヶ月かの勉強でとにかく使い始められるようになるのは一定の成果だと思う.少なくとも,微積分ができるまでの長い歴史を振り返ったり,その深遠さを語ったりすることは,習得のためにはあまり意味がなさそうだ.

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もちろんどんな理論も,「本質を捉える」ことは大切なのだけど,しかしそれは,驚嘆したり感激したりすることとは独立にできることではある.感動せずに勉強なんてちょっと味気ない感じだが,理論も技術も「使いこなせてナンボ」だとするなら,冷静に平常心で学んでしまう(感動は自分で使いこなせるようになったときまで取っておく?)のがよいのかも知れない.

日記 | 20:14:02 | トラックバック(0) | コメント(0)
円周率の求めかた
前回,『円周率(パイ)の近似として3.1416を考えると,誤差は50万分の1程度』とお話しましたが,このことについてちょっと考えてみましょう.そもそも円周率ってどうやって求めたらいいでしょうか?円周と直径の長さの比が円周率---だから円を用意し,直径と円周の長さを注意深く測ればが精度よく求められるはず---

かというと,実は話はそう単純ではありません.例えば上の50万分の1ってどれぐらい?というと,50メートルに対する0.1ミリという割合です.この両者の長さを想像してみてください.50メートル程の長さのものを誤差0.1ミリ以内で測るというのは,ほとんど不可能といってよい程難しい作業だとお分かりいただけると思います.しかも,精度を一桁上げるためには,10倍細かく測らなければなりません.そして例えば15桁というようなことになると,これは「太陽の直径を髪の毛の太さの誤差未満で測る」,あるいは「1メートルを陽子の直径の誤差未満で測る」といったレベルで,もう何をどうやってもできっこありません.

では,=3.14159265358979323846264338... とずっと先まで計算されている円周率は,いったいどうやって求めたのでしょう??

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この問題,算数・数学好きの小中学生の自由研究にとてもよいのでは----と思われるのですが,残念なことに(実に残念なことに!)ちょっとおススメできません.この問題は結構手ごわく,高校ぐらいの数学を使わないと難しいのです.高校数学を使うなら例えば次のような方法があります:数学IIIでこんな式が出てきます.
この右辺を図形の面積と見て,曲線を折れ線で近似すると,の近似値を計算できます.手計算では大変ですが,パソコンを使って計算してみると(プログラムは簡単!できる人はぜひやってみよう) --- 0≦x≦1を100等分すると,3.141575で,小数点以下4桁まで一致します.1億等分すれば 3.1415926535897932217...で,16桁目まで一致しました.ということで,高校数学+パソコンの計算力で,太陽と髪の毛の比を超えるぐらいまでできました.

しかしこれでも,何千桁,何万桁と求めるのは難しそうです.

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ではもっと先まではどうやって計算するのでしょうか?その一つにこんな公式を使う方法があります.
何だかとんでもない式ですねぇ(数学者だってそう思います).これはインドの神秘的数学者ラマヌジャン (Ramanujan, 1887-1920) によって予言された式で,ちゃんと証明されたのは何と1985年のこと.およそ簡単とは言いがたい式ですが,右辺の収束が非常に速いことが特長です.はじめの5項の和で既に40桁合い,126項で一致は1000桁を突破!します.

現在はこれを改良・発展させた式
がよく使われています.去年8月には近藤茂さんという方が,アメリカの大学生アレキサンダー・イーさんと協力してこの公式を使って円周率を5兆桁まで計算し,2兆7千億桁だったこれまでの世界記録を更新しました.近藤さんはなんと会社にお勤めの傍ら,"趣味"として自作のパソコンを使ってこの記録を達成されたそうで,この近藤さんのエネルギーには敬意を表したいと思います.現在は10兆桁に向かって計算が進行中だとか.

近藤さんのホームページ:PI WORLD of JA0HXV
朝日新聞電子版の近藤さんの記事

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コラム | 08:55:07 | トラックバック(1) | コメント(0)
円周率,アルファベットに潜む!?
数学?と言えるか分かりませんが,今日はこんな民間伝承のようなお話を.

円周率はみなさんご存知ですね.

3.14159265358....

とどこまでも不規則に続く数で,分数(整数の比)で表すことはできません.古代から不思議な数としていろいろ研究されてきました.実用上は 3.14 と考えておけばたいていは大丈夫ですが,精密な設計では,3.1416 が使われることも多いそうです.3.1416 なら誤差は50万分の1ほどです.これは50メートルに対する0.1ミリというスケールなので,よほどでなければ大丈夫でしょう.

さてアルファベットが円周率と関係するということで,まずこれを円周上にぐるっと一周並べてみます.
Riemann

アルファベットには,A,H,I のように左右対称なものと,B,C,D のように左右対称でないものがあります.左右対称でないものだけに印をつけてみましょう.印の数を数えると‥円周率が浮かび上がってきませんか? 

アルファベットを作った人たちもまた,円周率を研究していたのかも知れません.

コラム | 19:22:58 | トラックバック(1) | コメント(0)

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