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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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解説記事の紹介『現代数学のめざすもの』
以前のブログで吉田輝義さんという方(と言いつつ実は,吉田さんは僕の大学院時代の同級生で,今もお付き合いをさせてもらっているのですが)の論説を紹介しました.吉田さんが『現代数学のめざすもの』というタイトルで再び現代数学の解説を書いておられます.それを案内しようと思います.前回は雑誌の記事でしたが,今回は吉田さんのwebsiteから直接取ってこれます:

ご本人のwebsite『現代数学のめざすもの』(PDFファイル, 12ページ)

ご本人の高校での講演が基になっていて,高2ぐらいまでの数学(=文系・理系共通範囲の数学)に慣れ親しんだ記憶のある方なら読み通せると思います.

目玉の一つは,2次・3次・4次方程式の解法を基にした,ガロア理論(と現代数学)の考え方の説明で,ここまでシンプルにまとまった解説はなかなか見たことがありません.大学数学科の花形とも言われるガロア理論ですが,『ガロア理論は,方程式のもっている「形」,その本来の姿を人類史上初めて「見た」理論だった』(文中より)ということが,実にうまく説明されていると思います.

また,それを土台に「数学とは何か?」という問いについても何やら突っ込んだことが書かれてあります.『代数・幾何・解析という数学の分類は,実は人間の脳がものごとを論理的に「理解する」ということの3つの形なのではないか』---この指摘が既出かどうか知りませんが,読んでちょっと驚きました.だとすると(論点を踏まえて文中指摘されているように)逆に言えば,人間のものごとに対する論理的な理解はそのような形に限界づけられてしまうということでもあって,これは学問に携わる者としては少しオソロシイような,ドキドキするような話です.(本当なのでしょうか??)

興味ある方にご一読をすすめたいと思います.

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日記 | 15:16:57 | トラックバック(0) | コメント(2)
本の紹介『フェルマーの最終定理(サイモン・シン)』
こんにちは.あけましておめでとうございます.

いつも見に来てくださっているみなさん,ありがとうございます.最近また,更新が遅れております.おおまかな構想はあっても,自分なりにきちんとまとめようとして時間がかかってしまうからです.ブログなのであまり神経質にならず,気楽に書く方がよいかもしれないとも思いつつ..もう少しペースをあげることを目標にしたい一年ですが,気長にお付き合いくだされば幸いです.本年もよろしくお願いします.

というわけで今年の一回目は,かなり有名にもなったこの本の紹介から始めたいと思います.

-------
フェルマーの最終定理
サイモン・シン(著), 青木薫(訳)
新潮文庫:¥ 820

フェルマーの最終定理をご存知でしょうか?

フェルマーの最終定理 『nを3以上の整数とするとき,
をみたす自然数x,y,zは存在しない.』


n=2 のときは,これはx2+y2=z2というピタゴラスの定理に現れる式で,(x,y,z)=(3,4,5),あるいは他には(5,12,13)など,たくさんの解があります.ところがこれは2乗のときだけで,3乗以上だとこの方程式にはいっさい自然数の解がなくなってしまう,ということです.この問題に気がついたのはフェルマー(Fermat, 1607?-1665)というフランス人です.フェルマーは証明を持っていると本の余白に書き残したのですが,彼の没後も遺稿からそれは発見されず,証明は後の世代の課題として残りました.この問題,とんでもなく難しく,なんと300年以上にわたって幾多の有名無名の数学者の挑戦をしりぞけ,またその過程で関係者の様々なエピソードも生んできたのです.

実は数学では,単に難しくて答えの分からない,そしてあまり面白くない問題を作るのは難しくありません.そしてこの問題も,いくつか根本的に重要な数学を生み出した過去はありながらも,20世紀に入ってからはもはやそのような問題の一例にすぎないとみなされることが多くなっていました.しかし1985年頃,難しくも非常に重要な数学の問題である『志村-谷山予想』という予想を証明できれば,それの帰結としてフェルマーの最終定理も正しいと確認できることが分かりました.

数学の中心的問題と結びついたことで,フェルマーの最終定理は再び大きな注目を集めました.そんな中,アンドリュー・ワイルズ(Andrew Wiles, 1953-)という数学者がこの問題を解決しようと心に決めるのですが,そこでワイルズの取った戦略はなんと,研究していることを全く誰にも明かさず,一人で秘密裏に進めるというものでした.このことがまた,この物語の結末をいっそうドラマティックにすることとなります.最後には,窮地に陥ったワイルズにかつての弟子リチャード・テイラー(Richard Taylor, 1962-)が応援に駆けつける,といった場面も出てくるのですが,詳しくは本をお読みください.

●   ●

さてこの本,著者の前書きによると『この物語(フェルマーの最終定理をめぐる物語)は,数学を前進させるものは何かという問題,そして,数学者を奮い立たせるものは何かという,おそらくはいっそう重要な問題に対して比類のない洞察を与えてくれる.』とのことで,実際に本文中ではフェルマーの最終定理と結びつけて,数学の発展の歴史とそれに関わった人たち(特に数学に情熱を注いだ人たち)のエピソードが実に多彩に織り込まれています.人名・キーワードだけを挙げると,例えば

ピタゴラスとその教団 / 不変量 / 14-15パズルの不可能性 / オイラー(Euler, 1707-1783) / ソフィー・ジェルマン(Sophie Germain, 1776-1831) / ガロア(Galois, 1811-1832) / ヒルベルト(Hilbert, 1862-1943)とヒルベルト・プログラム / 谷山豊(1927-1958) / 志村五郎(1930-) / ラッセル(Russell, 1872-1970)のパラドックス / 不確定性原理 / ゲーデル(Godel, 1906-1978)と不完全性定理 / チューリング(Turing, 1912-1954)と大戦時の暗号解読 / 素数と素数ゼミ・RSA暗号 / 四色問題


などなどですが,これだけの話題を分かりやすく興味深く説明し,一つの本にまとめたのは,才能と熱意あるサイエンスライターによってはじめてなしえたことと,僕ははじめて読んだとき非常に感銘を受けました.大学で説明される数学はとかく抽象的で無味乾燥になることもしばしばですが,実際には多くの人を惹きつける豊かな内容があることがこの本では描き出されているように思います.数学に興味のある方,とくに大学生や数学好きの中高生には何としても読んでもらいたい本です.

もちろん,数学の歴史は長く分厚く,フェルマーの最終定理もそれを題材にしたこの本も,数学全体の中ではその一断面を切り取ったものに過ぎません.これが数学の全体像と言うことは全然できないのですが,(勝手を承知ながら)願わくば,このような本が何冊か出て,それを読み比べられるようになるともっとすばらしいと思います.

●   ●

著者のサイモン・シンさんは大学院で物理学を専攻されていたそうです.もちろん,すぐれた資質や文筆活動に対する情熱がまずあってのことでしょうが,この本を書くにあたって,ご本人の大学院での学究の経験も大いに役立ったことはおそらく確かです.そう思うとき,このような本の存在は,大学院教育のあり方や目標についてもいろいろと示唆を与えてくれるように思われます.


(実はもう少し思ったことがあるのですが,長くなってきたのでいったんこのあたりで終わりにして,続きは後日に改めたいと思います.)

本などの紹介 | 23:34:40 | トラックバック(0) | コメント(2)

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