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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
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連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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プリンストン大数学科の感想
ご無沙汰しています。3月末でアメリカ滞在が終わって,日本に帰ってきました。しばらくバタバタするかなぁと思っていたのですが、やっぱりバタバタしてしまいまして、2か月もブログ放置となってしまいました。今後は日本から更新することになりますが、今回はプリンストン大の数学科に滞在した感想を書こうと思います。

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プリンストン大の数学科といえば世界最先端の研究拠点の一つで、世界に名の響く有名数学者もたくさん在籍して華々しく研究を展開しています。じゃあ彼らは、世界の数学を牽引するという大きな使命感に燃えて数学をやってるかというと、どうもそんなつもりはないらしいゾ?という印象を受けました.好き勝手(好き放題?)というか,気の向くままというか,無邪気というか.もちろん好きで始めたことであっても,山場があったり忍耐が必要だったりはするのですが,みんな気楽に数学をやっていたようです.

それが僕にとって少し意外に映ったのは,例えば,ヒルベルト(1862-1943),ワイル(1885-1955),ヴェイユ(1906-1998)といった,前の世代の指導的数学者の伝記・伝説や,あるいは数学者集団ブルバキの活動の,主として重々しい話を読んだり聞いたりしすぎていたからかも知れません.(リンクはウィキペディアに飛びます.)

具体的なことでは例えば,『こんな基本的なことも知らないで(あるいは気づかなくて),恥ずかしい』みたいな感性が,あまりないようでした.へー知らなかったなるほどー,とか,そっかー気づいてなかったなーアハハ,ぐらいです.そうは言っても,「基本的なこと」があまりいろいろ抜け落ちていると普通はまともな数学はできないわけで,それこそ彼らのセンスが非凡だから,変な間違い方をせずちゃんとした研究になるのかも知れません.

では学生さんたちはどうだったか.こちらも先生方の影響を受けてか,全体としては,明るく楽しくやっているように見えました.が,一歩内面に入って話を聞くと,先生の要求水準が高くてキツイとか,また研究者を目指す場合の長丁場の競争とか,いろいろなプレッシャーがあるようでした.特に後者については,任期なしの研究職(正教授=Full Professor)に就くまでの期間がアメリカでは長く,「公平な競争」の名の下、数度の審査を勝ち抜かなければいけない現実があります.このために人からの評価に敏感になり,それが流行りモノを追っかけるという気風を生んでいる面もあるだろうと思います.人を評価するということは結局どこまでも困難な問題なんだなぁ、と感じました。---って人ごとみたいですが、まぁしかし2年間の期間限定でいただけなので。

そんな中、非常にオリジナリティの高い研究成果をあげる若い才能がたまに現れると、そのニュースや噂がアメリカ中を駆け巡って話題になります。流行の発信地にあって、流行を生み出すのも流行に振り回されるのも自分次第,ってそれって例えばパリコレみたいなもんなんじゃないだろうか,と思いました。(僕の身なりやファッションセンスでパリコレなんて口にするのはなんだか場違いなんですが、まぁしかし、思っちゃったんです。)

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2年の滞在で何を学んだのか、今はまだはっきりしませんが、向こうの実情を多少は肌で感じることができたかも知れません。今後はあまり張り合いすぎないようにして、張り合うとしても彼らの戦術を真に受けるのではなく自分(たち)なりの戦術で挑みたいと思います。

日記 | 10:17:33 | トラックバック(0) | コメント(0)

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