■プロフィール

谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

■カテゴリー別
■新しいコメント
■リンク
■RSSリンクの表示
■カウンター

直角三角形の内接円
三角形の内側から,3辺に同時に接するような円を内接円といいます.
naisetuen

さて,この内接円の半径 r を求める方法にはどのようなものがあるでしょうか?

●   ●

ひとつには,次のように三角形の面積を使う方法があります.辺の長さをa=BC, b=CA, c=AB,そして面積を S としましょう.
naisetuen
さて,内接円の中心Iと各頂点を結んで△ABCを3つに分け,面積をそれぞれ計算します.
naisetuen
BCと内接円の接点をHとすると,BCとIHは直交します.よって△IBCは,BCを底辺とみたとき高さが内接円の半径 r になるので,面積は (1/2)ar になります.残り二つの三角形についても同様で,面積は (1/2)br と (1/2)cr です.この合計が三角形の面積 S になるのだから,
つまり,面積Sと三辺の長さ a,b,c が分かっていれば,内接円の半径は次の式で求められます.

特にもし△ABCが∠Cが90°の直角三角形なら、S=(1/2)abなので、
と,a,b,cを使って表すことができました.
●   ●

ところで直角三角形の場合は,内接円の半径を計算する別の方法があります.∠Cが90°とし,円の接点を次のようにL,M,Nとおきます.
naisetuen
すると,
   (ア)AN=AM, BN=BL
   (イ)四角形ILCMは正方形
であることが分かります.(理由はお考えください.ヒント:(ア)は,『円外の1点から円に引いた2本の接線の長さは等しい』から分かります.)よって,
これを r の式に直せば
となりました.(面積はタテ×ヨコという長さの2次式ですが,直角の場合はこのように1次式の範囲の中だけでも r を計算できたわけです.)
●   ●

ということで,直角三角形の場合は内接円の半径の公式が(I),(II)の2つできました.ということは,この二つの式をイコールでつなぐと,何か a,b,c のみたす関係式が出てくることになります.さて,それはいったい何でしょう.a+b+c=a+b+c のような「自明な」恒等式でしょうか,それとも‥‥??

コラム | 03:48:45 | トラックバック(0) | コメント(0)
本の紹介『シンメトリーの地図帳』
シンメトリーの地図帳
マーカス・デュ・ソートイ(著) 冨永星(訳)
新潮社:¥2625

以前,サイモン・シンさんの『フェルマーの最終定理』を紹介しました(その1その2).この本は世界でベストセラーとなったそうで、以降、一般向け数学解説書も増えた気がします。そんな中ついに、実際の数学者が書いた本まで現れるようになりました。今回紹介する『シンメトリーの地図帳』はソートイさんというイギリス人数学者の手によるものです.ページ数も内容も,量的にはこれぐらいが限界?というぐらいボリュームがありますが、かなり文才のある方のようで、とても面白く読めました。

●   ●

この本のテーマは「対称性」(と「群」--これは専門の数学用語)です.『フェルマーの最終定理』と同様、この本も実に多くのエピソードが織り込まれています。特に,「対称性」自体は,自然界にも人間の造形物にもあらゆる形で現れていますが,それが図や写真入りで興味深く説明されています.新石器時代の岩の玉・アルハンブラ宮殿の模様・花の形と蜂の視覚・バッハの音楽に潜む法則・ウィルスの立体構造,などなど.もちろん数学のエピソードも大昔から始まり多彩です.数学史上のさまざまな(名をあげればハイヤーム、タルターリャ、カルダノ、フェラーリ、アーベル、コーシー、ガロア、リー、クラインなど)人物のエピソードを織り交ぜつつ、対称性と群の研究史が描かれていきます。初めて聞いたエピソードもいくつもありました。

3次方程式と4次方程式の解法で歴史に名を残すカルダノやフェラーリの、文中に書かれた骨肉の争い(←いったいどこからこんな詳しい史実を見つけてきたんだろう?というぐらの)は、500年も前の話なだけになんだか喜劇的です。逆に,不朽の業績で現代数学に名を残すノルウェー人数学者のソフス・リー(Sophus Lie, 1842-1899)が、数学に打ち込みすぎたせいか、異郷の地ライプツィヒでホームシックから神経衰弱におちいり、被害妄想となってかつて共に学び研鑽しあった同志フェリックス・クライン(Felix Klein, 1849-1925)を自著で大っぴらに非難するに至る話は、少し身につまされるものがありました。

そして最終的には、「モンスター群」と呼ばれるものの発見を頂点とする、現役数学者の研究のドキュメンタリーに繋がっていきます。ソートイさん自身の研究の話も織り交ぜながら、コンウェイ、マッカイ、ノートン、フィッシャー、ゴレンシュタインといった現役数学者の、時に変人的?なまでの研究の様子まで生き生きと描かれています.

●   ●

『フェルマーの最終定理』と比べると、話の展開の流れるようなスムーズさは、さすがに本職のサイモン・シンさんの方が一枚上手かも知れません。しかし、代わりにこのソートイさんの本では、実際に数学に携わっている人ならではの距離の近さとv内容の正確さで、類書にない力強さが生まれているように思います。分厚いですが、読書好き・数学好きの方は是非いかがでしょうか?


【関連記事】
数学の世界のモンスター:モンスター群の紹介です。←実はこのとき、本書も参考にして書きました。
解説記事の紹介『現代数学のめざすもの』:対称性と群の数学的解説としても、吉田輝義さんの記事はすばらしいと思います。

続きを読む >>
本などの紹介 | 07:44:24 | トラックバック(0) | コメント(0)

FC2Ad