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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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数学のテレビ番組(お知らせ)
(今日は簡単なお知らせです.)

世間では数学ってどう伝えられてんだろうと思って,僕もたまにフジテレビのたけしのコマ大数学科を見たり,本屋さんの数学書コーナーに行ったりしています.今週の金曜日,NHKで「頭がしびれるテレビ」という数学番組のスペシャル版が放送されるそうで,皆さまにもお知らせします.

頭がしびれるテレビ スペシャル 名曲は数学で出来ている!?
NHK総合 2月15日(金) 午後10時~10時45分

音楽と数学に関係があるというのは,実は知る人ぞ知るひそかに有名な話なのですが(楽譜のルールって厳密でしかもけっこう「数学的」ですよね?),その関係を解き明かしてくれるそうです.よかったらいかがでしょうか.(僕の昔の友人もこの番組にちょっと関わったと聞いて,個人的にちょっと楽しみにしています.)

せっかくの機会なのでもう一つ,NHK高校講座の数学基礎もご紹介します.かの秋山仁さんが講師(!)です.僕が初めて秋山さんを見たのは1991年のNHK教育番組でのこと.バンダナに長髪ヒゲもじゃで登場し,独特のギャグをはさみつつ高校数学の斬新この上ない解説をする様は,とっても鮮烈でした.秋山さんだと,高校数学といっても予備知識があまりいらない内容になることも多く,ユニークな教材を使ってユーモアいっぱいで教えてもらえます.高校生でなくても面白く聞けると思います.数学は勉強したいけど,まず楽しくなくっちゃ始まらないヨ!という方はぜひどうぞ.数学が好きな方にとっても,新たな見方が学べて面白いかも知れません.次回は2月14日,午後3時半からの30分です.

日記 | 11:03:46 | トラックバック(0) | コメント(0)
本の紹介『やわらかな思考を育てる数学問題集』
やわらかな思考を育てる数学問題集
ドミトリ・フォミーン(著)
セルゲイ・ゲンキン(著)
イリヤ・イテンベルク(著)
志賀浩二, 田中紀子(訳)
岩波現代文庫,全3巻(各巻1000円程)


ロシア(正確には前ソ連)で生まれた問題集です.中学レベルの知識で(章により小学レベルでも),あとは興味と根気さえあれば取り組めます.

この本はまずアメリカ数学会から英訳され,それ後日本語になりました.僕にはちょっと見たことのない問題集でビックリしました.冒頭の『アメリカ版への序』に,本の生い立ちと内容紹介が書かれています.明瞭でもうこれ以上に僕が文を練る必要もないと思いますので,(少し長いけど)一部抜粋すると:

▲ ▲ ▲


 それではいったいこの本はどういう本なのでしょうか.この本は私たちから遠く離れた国の文化的環境の中でつくり出された注目すべき試みを示しているのです.というのは,現在のロシア共和国となる前のソヴィエト連邦で,生徒,先生,数学者たちがひとつになって数学サークルというグループをつくり,そこで新しい数学の教育活動をしていこうとする積極的な動きがありましたが,この本はそのグループの形成の核心におかれたものだったのです.

 この本を書いたのは大学の数学者たちで,これらの数学者たちの,高校生のグループとの交流の経験がこの本を生むきっかけになったのです.どんな生徒さんたちでも最初のいくつかはたやすく解ける,というように構成されています.そして,最初の段階の問題を解くときに使われたのと同じ原理で,後の方のかなり難しい問題でも解けるようになっています.

 以前のソヴィエト連邦,とくに当時のレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)にあった数学サークルは,アメリカにあるいろいろな数学クラブとはかなり違っていました.それらのグループのほとんどは高校の先生たちによって運営されるのではなく,大学の先生あるいは学生によって運営されていました.彼らはこれを自分たちの仕事の一部と考え,若い生徒たちに数学を学ぶ楽しさを教えたのです.

 数学教育の発達はロシアの文化の一面であり,そこには私たちが学ばなければならないことがたくさんあります.(中略)この本はそうしたロシアの文化の中から芽生えたものをそのまま借りてできたものです.

 どの章でも,非常に単純な形での数学的な方法の例が挙げられています.(中略)どのトピックでも,それに取り組むためにまず必要とされるものは柔軟な思考力であって,形式的な数学を単純に適用しようとする考えは避けられるように配慮されています.しかしそれでいながら,問題に取り組んでいると深い注意力が自然とひきだされるようによく工夫されています.

▲ ▲ ▲


問題数は相当多く僕もまだ一部を見ただけですが(サンプルの問題),よい問題集だと思います.大学の数学者や学生が本気で関わった力強さを感じました.

日本語版でやや惜しいと思ったのは『やわらかな思考を育てる数学問題集』という題名.英語版の題名はズバリ "Mathematical Circles"です.易しめの問題を拾うだけでも確かに「やわらかな思考を育てる」のに役立ちそうですが,この本の本来の目標はもっと野心的で,理数に強い少年少女の才能を(←もちろん老若男女問わないけど,特にという意味)大きく引き出すのが狙いに見えます.本当に読まれるべき読者に手にとってもらうなら,もうそのまんま

『数学サークル』 とか 『数学同好会問題集』

などの方が良かったのではないか.と言っても,売行きの問題もあるでしょうし,たくさんの人に手にとってもらうのも実際大切だから一概には決められませんね.とりあえずここに僕が大きい字で書いてみました.(もっとセンスのいい名前を思いついた人がいたらぜひご提案ください.)

●   ●

この本は問題集.思考力を育てることが主眼です.こんな問題集に取り組むのにいい人はというと,理数が好きな中高生がまず思い浮かびます.大学生には大学の数学にも取り組んでもらいたいし,頭の体操がしてみたいという場合は,数独・頭の賢くなるパズル(KENKEN)などの算数パズルや,『数と図形』のような本も選択肢にあります.とは言え,大量の良問がシンプルに収録されているので,使い道はかなり幅広いかもしれません.興味のある方,ぜひ一度手にとってみてください.

本などの紹介 | 20:04:53 | トラックバック(0) | コメント(0)

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