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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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時枝さんの連載コラム『こどもの眼・おとなの頭』最終回
以前に紹介した、月刊誌数学セミナーに載っていた時枝さんのコラム『こどもの眼・おとなの頭』は、2年間の連載を経て、先月発売の2015年3月号が最終回でした。最終回のタイトルは

このゆびとまれ

で、指や手を使った簡単で面白い遊びの紹介です。本当に誰でも遊べる内容で、家で3歳の娘とやってみたらずいぶん喜んでいました。数学以前、科学以前の話題で誰もが部分的には知っているような遊びですが、コラムの途中にはさりげなく、ヘレン・ケラーとサリバン先生の(かの有名な)逸話を引きつつ、指や手が言葉にもなること、点字や手話を少し知ることで言語学習に新たな可能性が生まれるのではないか、と指摘があって、子供が遊ぶ様子を思い出すと、考えさせられます。

大栗博司さんの本『数学の言葉で世界を見たら』でも、まえがきに「僕は、数学の勉強は言葉を学ぶようなものだと思っている。」とあります。確かに数学でも、数学の用語を使って、問題になっている状況をピタリと言い表す一文を考え続けてついにそれにたどり着いたとき、そのときに理解できたような気持ちになることがあります。言語化してみること、あるいは言葉を学ぶこと、ということは人間の知的活動において相当の広がりを持っているのかも知れません。

とりとめのないことを書いてしまいました。時枝さんの24回の連載は単行本化されることを期待したいと思います。最終回の「このゆびとまれ」、機会があったらぜひご覧になってみてください。


本などの紹介 | 03:56:28 | トラックバック(0) | コメント(0)
方向ベクトルと法線ベクトルの哲学的(?)考察
以前の連載(点と直線との距離の公式:前編中編後編)で、


の法線ベクトルが

であることを使って、点と直線の距離の公式や、円の接線の方程式が簡単に証明できることを説明しました。題名の「哲学」は冗談ですが、今日は、なぜ法線ベクトルが有効になる場面があるかを、一歩立ち戻って考えてみたいと思います。

●   ●

一言でいえば、方向ベクトルと法線ベクトルは直線を規定する重要な2つの属性で、どちらがより基本的かはその直線による、となります。

そもそも直線ってなんでしょうか?身の回りにある直線から考えてみましょう。まっすぐに敷かれたレールの上を走る電車を想像してください。このときは、レールという直線の方向ベクトルが電車の走る方向です。レーザー光線も、その方向ベクトルは光が進む方向にほかなりません。このような直線では、方向ベクトルが基本になっています。でも、そうでない直線もあります。今度はたとえば、海の彼方に見える水平線を想像してみてください。なぜ水平線は直線になっているのでしょうか?これはその水平線の方向が重要だというよりは、重力の影響を受けて、重力のかかる方向に対して垂直に水が広がってできる線だと考えたほうがよいでしょう。水平線は、重力の方向が法線ベクトルになる直線です。

身の回りにある直線は、だいたいは、方向ベクトルか法線ベクトルによって規定されています。たとえば道路に引いてある白線はたいてい、人や車の進行方向に沿うものか、または停止線のように、進行方向に垂直になっています。重力に垂直な方向に進むと重力の影響を受けないので、ボールや丸太は水平にコロコロ転がります。逆に木や電柱は、傾かずに重力の方向に直立することで、重力をバランスよく受け止めることができます。

ここまで考えると、点と直線の距離の公式や円の接線の方程式で、法線ベクトルが有効な理由がはっきりするのではないでしょうか。これらの問題では、直線の方向ベクトルよりも法線ベクトルの方が基本的だからです。高校の数学では、直線を、「傾き」すなわち方向ベクトルによって取り扱う方法に重点がおかれています。まずひとつの方に集中して定着を図るというなら、教え方としてはもちろんひとつのありうる考え方です。しかし、本来これはどちらか一方でよいというものではなく、問題によってどちらがより基本的かを考えることが(たとえば大学の数学や物理でも)大切です。

両方のベクトルと関係する直線もあります。たとえばノートの横罫線を考えてみると、その罫線に沿って左から右に字を書いていきますが(罫線の方向ベクトル)、全体としては上から下に書いていきます(罫線の法線ベクトル)。そもそも道も、通る人には方向ベクトルですが、渡る人は法線ベクトルに進みますよね。身の回りにある直線に少し思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。


コラム | 08:34:49 | トラックバック(0) | コメント(0)

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