■プロフィール

谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

■カテゴリー別
■新しいコメント
■リンク
■RSSリンクの表示
■カウンター

余弦定理(続)
前回の続きです.(同じ式番号を使います.)前回は第一余弦定理と呼ばれる式


が,頂点から垂線を下ろすことで明瞭に分かることをみました.一方,通常(単に)余弦定理と呼ばれる次の式は,上と区別するときは第二余弦定理と呼ばれます.


今日はこの二つの余弦定理の関係を考えましょう.

●   ●

(4), (5), (6) は証明できているので,これを使って(1), (2), (3) が示せないか?この問いが前回の結びでした.ひとつできれば後は同じでしょうから,


だけに集中しましょう.
から (1) を示したい.では‥?


示したい (1) に cos B はありませんから,(4), (5), (6) から cos B は消去できるといいですね.だったら (4) × a - (6) × c で,cos B を消去してみましょう.同じく cos C も消去したい.こちらは (4) × a - (5) × b で可能です.このふたつの操作はまとめることができ,


になります.その結果といえば


オヤ,b2とc2を移項すれば (1) ができました.(2) と (3) も同様です.

●   ●

逆に,(1), (2), (3) から (4), (5), (6) を導くこともできます.それは皆さんにお任せしましょう.ちなみに,コサインでなくサインの方を考えると,サインは斜辺分の対辺なので,次のような関係になります.

これを踏まえて前回も使った垂線の図をもう一度じっと見てみると‥

垂線の長さAHは,c sin B でもあり b sin C でもあります. c sin B= b sin C から


が出てきます.(ただし前回同様,B か C が鈍角のときは,別に考える必要があります.)同様に考えて,結局


となり,正弦定理の式が出てきました.(通常,正弦定理とは,この等しい値が外接円の直径になることも合わせて書かれます.)

頂点からの垂線とは補助線としてはかなり単純に思えますが,ここから余弦定理・正弦定理の双方が導かれるとなると,なかなか趣深いとも言えそうです.

コラム | 09:11:01 | トラックバック(0) | コメント(0)
余弦定理
三角形ABCについて,辺の長さを


のように a,b,c とおくと,


が成り立ち,余弦定理とよばれています.(注:余弦はコサインの日本語です.)が,これはより詳しく,第二余弦定理と呼ばれることがあります.その場合,第一余弦定理とは次の


を指します.なぜ第二余弦定理の方がメジャーで,称号「余弦定理」を獲得しているのか?端的に言えば,それは実用性の違いです.例えば aを求めるには,(1) なら b,c,Aの3つから計算できますが,(4)ならb,c,B,Cの4つが必要です.実際の計算に第一余弦定理を使うことはあまりありません.

では第一余弦定理の存在意義は何か?今日はこれをお題にしてみます.

●   ●

第一余弦定理のよさは何か.一つには,式の意味の分かりやすさがあります.コサインの定義を思い出しておくと,これは直角三角形で『斜辺分の隣辺』でした.だから,斜辺の長さをrとすれば,角θの隣辺の長さが r cosθ になります.

(ちなみに対辺の長さはr sinθ.)では(4)は何を意味するか.次のようにAからBCに垂線を下ろしてみましょう.

よぉく図を見てみると‥


そう,長さ a の線分BCを垂線の足のところで分けると,それぞれの長さは c cosB, b cosC ですね.これで a=b cosC+c cosB となって,(4)が証明できました.(注:ただしこの証明は,B, C の一方が鈍角のときは少し変更しなければなりません.垂線を下す方針は同様です.) (5), (6) も同じです.

●   ●

証明が簡単ならそれは当たり前の式でしかない?のかも知れません.でも,この(4), (5), (6) からは,第二余弦定理である (1), (2), (3) を導くことができます.どうすればよいでしょうか?(次回に続きます.)


コラム | 09:57:52 | トラックバック(0) | コメント(2)

FC2Ad