2017-10-29 Sun
小学校で、3×5とするところを5×3と書いたのでバツになるという話があるらしい。本当に間違いなのか。この指導は、「かける数」と「かけられる数」の区別ができているかを正しい式が書けているかどうかで判断しようということだと思うが、その判断の仕方はちょっと安直なように思われる。現場の難しさは知らないので何とも言えないが、子供が誤ったメッセージを受け取る恐れもある。個人的には、やらなくてすむならやらない方がいいと思う。問題点が二つある。そもそも、かける数とかけられる数とはどう違うか。例えば3cmを5倍にすることを考えてみる。この「3cmの5倍」は意味があるが、「5の3cm倍」と言われると、全く意味をなしていない。「〇倍」は小学算数のメインテーマである比例で、中核に位置する概念である。「〇倍」が何かを理解し、前者に意味があり後者は意味不明であることは分かってもらわなければならない。3cmの5倍は3cm×5という式で、このかけ算では、3cmがかけられる数、5がかける数という立場の違いがある。
でも、このような区別のない掛け算もある。「長方形の面積は、縦×横と横×縦のどちらが正しいですか?」と聞かれたら困る。どっちも正しいと言うしかない。というか、長方形の辺のどちらが縦でどちらが横かは置き方や見方で変わってしまう。そして、面積を縦×横と言った場合も、どっちがかける数でどっちがかけられる数かというのはない。つまり、『かける数とかけられる数という区別の、あるときとないときがある』のだ。これが一つ目の問題。
もう一つの問題が、『見方によって、かける数とかけられる数の立場が入れ替わることがある』という点。例えば、3色ダンゴが5串あったら、ダンゴは何個あるか。オーソドックスに解けば、3×5=15になるかも知れない。ここの3×5は
(1串あたり3個)×(5串)
という意味である。でも、5×3でも意味が通る。
(色ごとに5個)×(3色)
と考えたら、5×3になる。5×3を間違いにすると、こういう見方は認めないということになってしまう。また、ダンゴを串から外して長方形上に配置してしまえば、かける数とかけられる数の区別がなくなる状況にもなる。そうすれば、3×5と5×3は対等である。
かけ算ひとつを取っても、意味には広がりがある。いろいろな実例を通して、その広がりを経験することが大切だと思う。どんな経験をして、どう理解を深めたか。立式を見ているだけでは分からないだろう。機械的に評価できるようなものではないと思われる。