■プロフィール

谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
嚮心塾のホームページ
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

■カテゴリー別
■新しいコメント
■リンク
■RSSリンクの表示
■カウンター

素数のレース・5--付記
前回まで連載『素数のレース』,タイトルを付け直しました.

素数のレース・1--真剣な競争
素数のレース・2--勝負は永遠,でもリード期間に差が?
素数のレース・3--ゼータ関数と複素数平面
素数のレース・4--100万ドルの懸賞金問題とその先

長い記事だったからか,追記しておきたいことが出てきました.新たな話題に移る前,今日はそれを.

-----------

素数のレースの話が,いつの間にやら100万ドル懸賞金問題のリーマン予想に発展してしまいました.リーマン予想は非常に有名な話題で,解説した本も多く出ています.ここでは一般向けのサイエンス読本として,さらに知りたいと思われる方のために,以下の2冊を紹介します.

『素数に憑かれた人たち』ジョン・ダービーシャー (著), 松浦 俊輔 (訳), 日経BP社
『素数の音楽』マーカス・デュ・ソートイ (著), 冨永 星 (翻訳), 新潮社

どちらも今手元になく,詳しいことが書けず申し訳ないのですが,読んだとき面白いと思った記憶があります.『素数に憑かれた人たち』は,数学の解説と,歴史や人物の解説を交互に進めるユニークな構成でした.『素数の音楽』もかなり面白かったのですが,これは絶版かもしれません.でも,リーマン予想に関して是非とも本を読みたいという方にはお薦めできますので,古本屋さんで探してみてください.



もう一つ,ゼータ関数のことで,大切だけど説明を省略した点について補足したいと思います.ディテール(詳細)にこだわらない方は,大雑把に流し読んでいただいて構わないことですが.

突然ですが以下の式をご覧ください.どう思われますか?
そんなバカな!!ですよね.3倍しながらドンドン大きくなっていく数を無限に足していった結末が負の分数??無茶な式です.しかし,目的のためには手段を厭わない昨今の数学研究者たち(?)は,整合性に注意を払いながら,慎重にそして大胆に,このような式を扱うことがあります.

では,"証明"してみましょう(!) この左辺の 1+3+9+27+... を A とおきます.すると
となります.A=1+3A を解いて A=-1/2, 以上証明終わり.

うーん,怪しいですねぇ(笑).しかし他にも例えば,初めの2つの1+3を別にしてくくっても,
A=1+3+9(1+3+9+....)=4+9A
となってやっぱり A=-1/2 となりますし,1+3+9を別にしてくくってもやはり同じになります.いかがでしょうか??中途半端に説得力があるだけに,『ヘンだが一応認めてヨイ』という気になってくださる方,『到底認められン!』と余計に警戒される方,どちらもおられると思います.

もう少し「正統的」な説明をします. 無限等比級数の公式
というのがあります.これは |r|<1 でないと成り立たないのですが,これに誤って r=3 を代入すると (I) になります.これは「間違って」いるのですが,式(II)の奇妙であり面白くもある点は,左辺には r=3 を代入できない(=無限大となり数値として意味をもたない)のだけど,右辺は r=3 を含め,1以外はどんな値でも代入できる(=数値として意味をもつ)ということです.

ゼータ関数は和で書くと
でした.ゼータ関数には例えば,ζ(-3)=1/120 という公式があります.これも
と書いてしまうと,冗談はヤメィ!とばかりの奇妙な式です.(III)の無限和に代入して収束するのは,sの実数部分が1より大きいときだけなのですが,しかしこの無限和も(II)のようにうまく変形することができて,その変形した後の式には堂々と,1以外のどんな値も代入できるようになります.このような変形は,専門用語で『解析接続』と呼ばれています.

「実数部分が1/2の直線上にある零点」というのも,実数部分が1以下なので,(III)の無限和に代入することはできません.しかし,その変形の後は代入ができ,それで ζ(s)=0 となる点を言います.そしてこの事情は,エル関数の零点も同様です.


以上です.ではまた次回,新しい話題でお会いしましょう.

(追記)
『素数に憑かれた人たち』には,同著者による『代数に惹かれた数学者たち』という,姉妹編のような本があります.こんなことを書くのは気が引けるのですが,この『代数に惹かれ数学者たち』の方は,びっくりするほど面白くありませんでした.『素数に憑かれた人たち』は面白かっただけに,同じ著者で何故?と思って並べて読み比べたりしたのですが.この2冊の落差に,今でもちょっと狐につままれたような気分です.敢えて読んでいただくほどのことはありませんが,もし両方とも読んだという方がおられたら,感想をお聞かせいただけませんか.


コラム | 21:55:23 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad