■プロフィール

谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

■カテゴリー別
■新しいコメント
■リンク
■RSSリンクの表示
■カウンター

論説の紹介『ガロア理論の基本定理』
分数の話の途中ですが,雑誌『現代思想』の4月号に掲載されている,吉田輝義さんの『ガロア理論の基本定理』という論説が読んで興味深かったので,簡単に紹介したいと思います.

ガロア(Galois,1811-1832)というフランスの天才数学少年によって生み出された,ガロア理論という理論があります.これはその後の数学の流れを変えたほどの重要な"革命的"理論だったのですが,ガロア理論の抽象的な性格もあって,その意味を実感することは数学科の学生にとっても簡単でない(200年近くも経つというのに)のが現状です.アインシュタインの相対性理論は100年も経たないうちにCGとなり,テレビの科学番組で解説され,科学好きの中高生の心を掴んでいる--それと比べると数学者としてはちょっとクヤシイ.そんな中この論説は,ガロア理論の本質を損ねることなしに,ガロア理論とその意義を一般の読者向けに描き出そうと試みた野心作です.

数学者にとってはまず何より,基本定理の(驚くほど!)短く完結した証明がある点がポイントであろうかと思います.そして線形代数的な証明法による特徴として,ガロア理論から方程式論を完全に分離した理論展開になっています.たいてい教科書ではガロア理論と方程式論はごちゃまぜに進むので--それ自体は悪いわけではありませんが--,僕自身も理解が整理されました.

また,一般の方にとっても(数学者にとっても),数学を語ることの意義に緻密な反省を加えつつ,ガロア理論の思想的含意を詳しく論じているので,現代数学に興味のある方には資するところがいろいろあると思います.また,書き口が軽妙でテンポよく --ワイングラス・コーヒーカップやサンマの塩焼き,「過去の消された大人同士の付き合い」やら「悪魔は細部に宿る」やら-- 読み手を飽きさせません.もっとも展開されているのは漫談ではなく内容ある解説なので,読む際には熟読をお勧めしたいのですが.よく読むほどに味が出ると思います.

読んでみて,相対性理論のようにいかないのは導入部分の難しさの違いも大きく,単純に比較しても意味がないこともよく分かりました.しかし,とてもよく書かれていると思います.「びっくり数学島」よりはもちろん高度な内容ですが,一歩先まで覗いてみたいという方には是非お勧めしたい論説です.



(追記1)吉田さんの記事だけコピーが手に入ったですが,まだこの4月号の本自体は入手できておりません.他の記事については何も書けずすみません.

(追記2)ちょっと惜しまれる点は,「D:現代数学」のガロア理論の幾何学的解釈に関する参考文献が挙がってないことでしょうか.もちろん意図的というか,結局のところ専門的なものしかないということで敢えて書かなかったのだろうと思われますが.これは他の記事が参考になるかも知れませんが,ここで個人的に(勝手なことをしますが),久賀道郎著『ガロアの夢』(日本評論社)を挙げておきたいと思います.

(追記3)興味を持たれた方は,他に現代思想の2008年11月号と2009年12月号にも吉田さんの記事があります.

(追記4)基本定理の証明については,若干の改良版がご本人のwebsiteにあるようです.(でもせっかくなので,読むときはこれだけでなく,論説内の「証明についてのライナーノーツ」などとあわせて読まれることをおすすめします.)


日記 | 20:42:32 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
買っちゃいました♪
独特の語り口ですね。
ちなみに,いま同僚に輝義さんの高校の同級生がいます。
2011-07-05 火 12:20:28 | URL | minopapa [編集]
minopapaさん,再びのコメントどうもありがとう!他の記事も面白そうで,まだ僕は手に入ってないのだけど,近いうちに読んでみたいと思っています.同僚に元同級生の方ですか.いろいろつながりがありますね.
2011-07-06 水 21:57:17 | URL | 谷口隆 [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad