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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
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連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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日記:数学者の現代講演(or授業)事情
研究集会やセミナーでの数学者の講演が,昔よりも分かりやすくなっているように感じている.こちらの Bhargava さんの講演や授業が分かりやすいことは有名だったけど,先日聞いた Venkatesh さんの講演も,聞く人に分かりやすいよう考えられた構成で印象的だった.

今年の春まで日本にいたときもそうで,僕が大学院に入りたての10年ぐらい前との比較でも(というか,実際のところそれしかできないが),分かりやすい講演が多くなったように感じていた.全体的にそういう流れにあって,聴衆に対する配慮は昔より増えているような気がする.

研究分野の細分化は昔から問題だったが,ここ30年ぐらいで研究分野はすごい勢いで増え,幅広い分野を見渡すことはより難しくなった.特に,実際に研究を進めるための専門的なテクニックについては,もはや誰にとっても一部分しかマスターできなくなっている.そんな現代,講演は分かりやすさの配慮が大切なのだろう.

また,研究者人口の増加もこのことと無関係でないと思う.岩波現代文庫『ヒルベルト』を読んでみて,例えばヒルベルト(Hilbert, 1862-1943)の時代には,大学で常勤研究職を得たのは,歴史に名を残すようなほんの一握りの人たちだけだったと気づかされた.今の時代は,学ぶ側も教える側も,大学に関わる人が遥かに増え,裾野が広がっている.昔は,才能のある数学者は講演が上手くなくとも,同じく才能のある数学者には,言葉にならない部分で何かテレパシーのようにアイディアを伝えられて,交信が行われていたのではないだろうか.現代でもその"テレパシー"は当然大切だろうが,ずっと多くの人間で理解や知識を共有するわけだから,天才同士のテレパシーが飛び交っているだけでは不十分,ということもあるんだと思う.

もちろん,分かりやすいことだけが大切なのではない.ただ分かりやすくというなら,簡単にすればいいだけなのだから!講演や授業で大切なのは,それがエンカッレジング(encouraging)である(聞いている人に元気が出て,よし,自分も数学やってやろう!と思わせる)ことと,インスパィヤリング(inspiring)である(聞いている人の脳を活性化させて,いろいろなことを考えさせる,とかかな(?))ことだと思う.

今後研究者の資質として,研究そのものの遂行能力の他,分かりやすく伝達できる能力も大切になるのかもしれません.

日記 | 22:58:53 | トラックバック(0) | コメント(0)
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