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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
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連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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割り切れる分数・割り切れない分数(後編)
前回の前編で,割り切れる分数と割り切れない分数は,数としての性質が根本的に違うものなのか,それとも特に区別して扱う必要のないものなのか,という話を始めました.その最後に書いたとおり,結論としてはこれらの分数に根本的な違いはありません.今回はそのことをお話したいと思います.

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まずは,1/3cmが作図できることをお見せしましょう.ただ1/3cmではちょっと図が分かりにくいので,代わりに5cmの3等分,5/3cmを作図してみます.

sakuzu1[1]
5cmの線分ABを取る.
Aから線分と別の方向に3cmの線分ACを取る.
ACの1cmごとの途中の点をD,Eとする.


sakuzu2[2]
CとBを結ぶ.


sakuzu3[3]
D,EそれぞれからCBと平行な線を引く.
線分ABは,この平行線との交点で3等分される.(!)


5cmでなくても,どんな長さも同じように3等分できます.それどころか,この作図法なら7等分だって11等分だって同じようにできますね.2等分・5等分とそれ以外の3等分・7等分‥が完全に同等の扱いとなるわけです.

僕はこのことに気づいて以降,割り切れるかどうかで分数を区別する必要を感じなくなりました.ところで,これに気づいた--気づいたと言っても自分で思いついたのではなく,これが書いてある本を読んだのですが--のは高校生のときでした.なんと,始めて疑問に思ってから十年ぐらい経っていることになります.これはちょっと長すぎたかも知れません.しかし一般的に言って,分からない問題を気長に頭の中で"飼っておく",そして時々"眺めてみる"ことはとてもよいことだと思います.僕にとってはこの十年の間,数学を嫌いにならずにいられたことは運のよかったことでした.

●   ●

割り切れる・割り切れないの問題に戻って,もう少し突っ込んでみましょう.作図できることは分かったので,『なぜ3等分は作図できるのに,1/3は割り切れないのか?』とでも問い直してみましょうか.

1/3は割り切れない.だから1リットルの3等分は,333.333…ミリリットルとどこまでも3が続き,1メートルの3等分も33.333…センチと終わりがありません.でも果たして「1」の3等分はいつでも割り切れないのか?というと実はそんなことはありません.1日の3等分はきっちり8時間で割り切れます.1時間の3等分もきっちり20分で割り切れる.1周の3等分は角度で120度ですよね?

この違い,特に1/3が割り切れない理由は実は十進法という,私たちが使っている数表示の仕組みの方に原因があります.十進法と聞くとなにやら難しそうですが,これは単に

『1つの単位が10個集まったとき一つ上の単位を作る』

という仕組みのことです.例えば日本古来の容積の単位に合・升・斗というのがありますが,1升は10合,1斗は10升のことなので,これは十進法です.一方で,1ダース=12個という単位があります.この上にはグロスという単位もあって,1グロス=12ダースです.これは十二進法になります.「2斗4升7合」は247合とも24.7升ともすぐ分かりますが,「2グロス4ダース7個」は247個ではないし,24.7ダースでもありませんね.これは現在私たちが数の表記に十進法を使っているからなのです.

十進法に慣れていると十二進法が扱いづらそうに見えますが,いろいろな等分ができる利便性が十二進法の長所です.1ダースのボールを3人で分けるとぴったり4個ずつ.他に2,4,6人でも分けられます.1フィート=12インチも十二進法の例ですね.ちなみにこちらアメリカでは,長さはフィートとインチの十二進法を使うのに,重さの単位には1ポンド=16オンスという十六進法が使われます.8オンスと聞いて半ポンドとはなかなかピンと来ません.全てが十六進法ならまだそのうち慣れそうですが‥正直やめてほしいです.おっと話がそれました.

数表記に十進法を使っている私たちは,小数点以下の単位も,十等分の繰り返しで作っています.0.1とは1を10等分した一つのこと.0.01とはそれのさらに10等分だから,100等分の一つです.でも,時間の単位は違う分割を使っています.1日を24等分して1時間を作りますが,その下の単位はどうしているでしょうか?1時間を60等分して1分とし,1分を60等分して1秒としていますね.だからこの時間・分・秒は六十進法になります.

なぜ1時間は20分ぴったりに3等分できるか?それは60等分としての1分を作ったので,それを20個集めれば1/3が作れるからです.1リットルの3等分が333.333..ミリリットルと数が続くのは,1リットルを12等分なり60等分なりした単位を作らず,ただ単に十進法とそれで作った単位(ミリリットル)で書くからなのです.

これを足がかりに数表記について考えてみましょう.仮に数表記に十二進法を使ったとします.すると0.1が12個集まって1ができることになります.4個集まると1/3になるから,1/3は0.4と割り切れる分数になります.もし三進法なら1/3は0.1で,七進法なら1/7が0.1になります.逆に三進法や七進法だと1/2は割り切れないんですよ.僕も思い出すたびに,少し不思議な気になるのですが.例えば三進法で1/2は,0.11111...と1がどこまでも続く数になります.気になる人はぜひ理由を考えてみてください.

●   ●

ということで結論です.作図で何等分にするのも手順が全く同じなのは,割り切れる分数と割り切れない分数にあまり差がないことを予見させます.ここまででも十分素晴らしい直感的理解だと思いますが,さらに突っ込んで答えると,『分数が割り切れるかどうかは,数表記を何進法で考えるかによって変わってしまうことなので,その分数そのものの性質とはあまり関係がない』でした.



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コラム | 00:39:47 | トラックバック(0) | コメント(3)
コメント
ひとつ質問です
分かりやすく興味深い話でした。
読んでいてふと思ったのですが、
無理数が無限小数なのに作図可能なのも同じような理由でしょうか。
2014-04-25 金 19:18:16 | URL | 七氏 [編集]
ひとつ質問です
分かりやすく興味深いお話でした。
読んでいてふと思ったのですが、
累乗根など無理数(無限小数)の中にも作図可能なものがありますがそれらも同じような理由でしょうか。
簡単でもいいので説明頂けたら幸いです。
2014-04-25 金 19:33:31 | URL | 七氏 [編集]
七氏さま、コメントをありがとうございます。作図可能な累乗根ですが、まず平方根は作図ができます。具体的には、aと1から√aが次の手順で作図できます。

長さがa+1の線分AB上に、AP=a、PB=1となる点Pをとります。ABを直径とする半円を書き、Pを通ってABに垂直な直線とその円の交点をCとすると、PC=√aになります。

このことを繰り返せば、平方根の繰り返しになる冪乗根、つまり4乗根、8乗根、16乗根、…は作図可能です。一方で、3乗根は一般に作図可能ではありません。一般的に作図可能なn乗根は、nが2冪のものに限られるということが実は証明されています。

どうしてかごく大雑把に言いますと、座標平面で考えたとき、直線は1次方程式で、円は2次方程式で表されます。それらの交点を求めるということは、それらの連立方程式を解くということで、この場合出てくる方程式は1次方程式か2次方程式で、その解は必ず四則演算と平方根を使って表されます。(そういった操作の繰り返しで、2冪乗根以外のn乗根を表すことができないことが証明できます。)


平方根はコンパスを使うと作図できますが、√2などは四則演算だけではできない数なので、有理数(=整数比になる数)とは少し異質なもの、という印象があります。
2014-04-26 土 08:47:09 | URL | 谷口隆 [編集]
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