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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
今まで書いたもの一覧



連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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本の紹介『放浪の天才数学者エルデシュ』
『放浪の天才数学者エルデシュ』
ポール・ホフマン(著), 平石律子(訳)
草土社:¥ 1,890

ポール・エルデシュという数学者をご存知でしょうか.

約15年前まで生きておられた20世紀の数学者ですが,とにかく数学の打ち込み方が普通じゃありません.数学に最大限の時間がとれるよう,職務も趣味も,妻も子供も,家すら持ちませんでした.世界中を飛び回って,各地の研究者を訪れては共同研究を行い,若い才能を探し,依頼があればいつでも喜んで教壇に立つ,そんな人生を本当に生きた数学者です.毎日19時間数学をしたとも言われ,生涯に発表した論文は約1500本(!),共著者は約500人(!)にのぼります.

天才数学者であったと同時に人間性もユニークだったようです.研究者を訪れたときの決まり文句は『私の頭は営業中だ (My brain is open.) 』で,相手が限界でぶっ倒れるまで議論を続けたとか,『私有財産なんて煩わしいだけさ (Property is a nuisance.) 』と言ってスーツケース1個で生涯旅を続けた,など伝説となる話題には事欠きません.(必要なお金は講演謝金で賄ったようです.)20歳になっても自分でパンにバターを塗ったことがなかったとか,トマトジュースのパックの開け方が分からず,泊めてもらっている家で台所の床を一面真っ赤にしたとか,”いかにも”なネタもあります.研究仲間グラハムとのグレープフルーツをめぐる滑稽なやり取りや,手術の眼科医とのとんでもない議論をはじめ,本の中はツッコミどころ満載なエピソードに溢れています.一方,ユダヤ系ハンガリー人として,20世紀の世界情勢に翻弄され,それに屈することなく戦った様も描かれています.


エルデシュは,独自の言葉(エルデシュ語?)や言い回しをたくさん考え,好んで使ったようです.少し例を挙げると:

エプシロン(ε)‥子供のこと.数学でεは,小さい数を表すときに使われる.
SF‥至高のファシスト(supreme fascist),天上にいるナンバーワンのやつ.エルデシュの眼鏡を隠したりパスポートを盗んだり,もっと悪いことに,ありとあらゆる興味深い数学の問題の明快な解を独り占めしていて,エルデシュを苦しめる神のこと.
ザ・ブック‥SFが持っている本.すべての数学の定理の,最高の証明が書かれてある.
神老(dotigy)‥老いぼれの天才のこと.神童(prodigy)という言葉に対する反感から作り出した造語.

エルデシュは,知り合いの子供であってもそうでなくても,子供をこよなく愛したそうです.数学については『神は信じなくてもいいが,ザ・ブックについては信じたほうがいい』とよく語り,仲間の研究に対する最大の賛辞は『これはザ・ブックから来たものだ!』でした.年齢と共に数学力が落ちることを極端に恐れていたエルデシュは,神老という言葉で仲間同士鼓舞しあっていたようです.手間がかかる変わり者でありながら人間的魅力に溢れたエルデシュを周囲の人たちは大切にし,親しみを込めて「ポールおじさん(Uncle Paul)」と呼んでいました.

数学者仲間でときどき話題になる,エルデシュ数というものがあります.これは,まずエルデシュ本人はエルデシュ数0とし,エルデシュと一緒に論文を書いたことのある人はエルデシュ数1,エルデシュ数1の人と一緒に論文を書いた人はエルデシュ数2,‥‥としていくものです.エルデシュと共同で論文を書いたことのある,栄誉あるエルデシュ数1のメンバーは約500人.エルデシュが亡くなったので,もうこの人数は変わりません.調べてみたところ,僕も(運のよいことに)エルデシュ数を持っていました.その番号は‥ここでは伏せておかせていただきたいと思います.


ポール・エルデシュ(Paul Erdős, 1913-1996)

(追記)

"N is a number : A portrait of Paul Erdős" というドキュメンタリー番組があり,そこではエルデシュ本人へのインタビューも多く収録されています.DVDを手に入れるのは簡単でないかも知れませんが,YouTubeで見ることもできるようなので(英語ですが),より生の人物像に興味のある方はご覧になってみて下さい.

本などの紹介 | 22:12:54 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
どうも、ブログ拝見させていただきました!
ちなみに、Erdos-Bacon数というのもあるのですが、ご存じですか?Kevin Baconという、やたら色々な映画に出ている俳優がいるのですが、彼と映画に共演した人はBacon数1、その人と映画に共演したら2、などなど。そして、Erdos-Bacon数はErdos数とBacon数を足し合わせたものだそうです。意外な人が結構低い数を持っていたりします(確かNatalie Portmanは8ぐらいだった気がします)。谷口さんも映画に出演して狙ってみたらどうですか?
2011-01-03 月 00:46:13 | URL | じゅん [編集]
コメントありがとうございます!
そういうじゅんさんこそ!

Natalie Portman さんはwebで調べて始めて知ったのですが,この方を見るにつけても,僕が Bacon 数を持つのは(有限の値になるのは),僕の Erdos 数が1になるのと同じぐらい難しそうです.狙うのは他に適切な方がおられるような気もします.しかし,Erdos 数が小さくなろうとなかろうと,Erdos のような,数学者としても人としても素晴らしい人に少しでも近づけるよう,頑張りたいと思います.
2011-01-03 月 22:26:24 | URL | 谷口隆 [編集]
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