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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
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連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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リーマン予想が解かれてほしいなぁと思うこれだけの理由(前篇)
(12/4 追記:題名を「解かれるべき」から「解かれてほしいと思う」に変更しました.それも含めて,こんなことを書きたくなった理由も,次回には少しお伝えしたいと考えています.)

数学にリーマン予想の名で知られている,とても有名な,そして少し不思議な未解決問題があります.最近になってなぜか,この予想は解かれるべきなんじゃないかと発作的に思うことが増えてきました.リーマン予想については,以前の素数のレース(その3)素数のレース(その4)である程度書きましたが,命題だけ書けば次のようなものです.

リーマン予想:実数部分が0以上1以下の複素数で,リーマンゼータ関数の値が0になるものはすべて,実数部分が1/2になっているだろう.
(短く言えば:リーマンゼータ関数の非自明零点は実部が1/2だろう.)

リーマン予想は,歴代の有名数学者の挑戦を150年以上にわたり退け続け,現在は100万ドルの懸賞金もかかっている,解決のめどもさっぱり立っていない,超有名な難問です.そんな問題に一介の端くれ数学者がコメントしても,もちろんヨタバナシにしかならないわけです.(僕自身,解かれるべきだなんて刹那的に思っても,しばらくしたら「でも難しいし,手がないんだよな」と思い直すことになります.)ですがまぁ,なぜそんな感想を持つのか,素朴に書いてみました.数学的には少し高度ですし,かといって数学者から見るとやや砕けた説明ですが,ご容赦ください.

●   ●

【1】問題が十分具体的,明示的.現象も著しい.
数学の命題は『カレコレの条件をみたすものについて,シカジカが成り立つ』と定式化されることが普通ですが,問題が難しい場合によくあるのは,「カレコレ」の条件が抽象的で,条件をみたすものがどんな風になってるか,どれぐらいあるのかが分からない,だから捉え難いということです.リーマン予想の場合はそうではありません.明確な定義を持つリーマンゼータ関数という解析関数の,具体的な性質を問う問題です.そして,値が0になる点が,複素数平面上で完全に一直線上に並ぶという,明らかに理由を知りたくなるような現象を問題として立てているわけです.

【2】素数分布における,明快な確率論的・統計的解釈がある.
1億=108以下の素数の個数を数えると,5761455個あります.唐突ですが,これを定積分と比べてみましょう.この定積分の値は約5762208で,素数の個数との差は750ほど.これを「差がそんなに小さいなんてすごい!」と思ってもらえたら嬉しいのですが,どうでしょうか.ともかく,数値実験ではこの後も,定積分が,素数の個数を数える関数を非常によい精度で近似していることが観察されています.(例えば1010以下の素数は4億5505万2511個, x=1010までの定積分は4億5505万5614ぐらい.)

リーマン予想は,この近似の精度に言い換えることができます.具体的には,リーマン予想は,この近似の誤差がだいたいに収まるということと同値になります.ここで出てくる「ルートx」は,確率論で出てくる話と比較されます.それは非常に大雑把に言うと,『表裏の確率が半々のコインを何度も投げて,(表の出た回数)と(裏の出た回数)の差を考える.投げる回数Nを十分大きくするとき,差はルートNぐらいのオーダーに収まる.』というものです.確率1/2とはいっても,実際の試行では完全に半々でなくブレが出るわけですが,そのブレ具合のオーダーが概ね回数のルートに収まるという話です.

つまり,リーマン予想が正しいということは,『 t 近辺の自然数に素数が現れる確率は完全に1/(log t)であって,実際の数え上げ(素数かどうかの試行?)との誤差はだいたいルートのオーダーに収まる』ことを意味することになります.素数の現れ方のランダムさを思うと,これは驚くほど凛とした言明に思えます.

【3】リーマン予想は基本ケース
リーマンゼータ関数の類似をたどり,また発展させ,現在では多種多様なゼータ関数が考えられ,整数論を中心に大きな活躍をしています.(名前だけ挙げれば:DirichletのL関数,Dedekindのゼータ関数,保形形式のL関数,Hasse-Weilのゼータ関数,‥‥)そして今のところ,これらのありとあらゆるゼータ関数・L関数はリーマン予想と同様,零点が一直線上に並んでいることが数値実験で観察されていて,反例は唯一つさえも見つかっていません.それら一つ一つが【2】のような素数分布についての解釈を持ち,他にもいろいろと応用があるのですが,これらのゼータ関数は全部,リーマンゼータ関数の発展形なのです.だからこれは,リーマンゼータのときが基本となって,その発展型問題である可能性が非常に高い.一般のゼータ関数にアタックするには,まず基本ケースであるリーマンゼータの場合ができないと始まらないのです,おそらくは.

●   ●

もう3つぐらい思っているので,遠からず次回に書きたいと思います.

コラム | 06:16:30 | トラックバック(0) | コメント(3)
コメント
ご無沙汰しております
谷口君

お久しぶりです。
大学時代、数論序説の自主ゼミで一緒だった高橋です。
ひょんなことから、このHPを見つけました。

リーマン予想の話は目から鱗でした。
私自身、大学院では確率論の勉強していましたが、
まさかリーマン予想が確率論と繋がっているとは
思いませんでした。整数論は詳しくはないですが、

ガウスの素数定理 … 大数の法則
リーマン予想 … 中心極限定理

のような位置づけでよいのでしょうか?
それだと、リーマン予想が数論の中心的な
話題になるのは頷けますが。
2014-02-22 土 21:07:56 | URL | naoty [編集]
続編はまだでしょうか!?
はやく読みたいです!
2015-03-07 土 04:04:11 | URL | 名無し [編集]
Re: タイトルなし
この記事のことを覚えてくださりありがとうございます。確かに途中になっていました。また書きたいと思いますので、少しお待ちください。コメントをありがとうございます。
2015-03-13 金 03:55:26 | URL | 谷口隆 [編集]
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