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谷口隆

Author:谷口隆
数学を題材に綴るというちょっと変なブログですが,楽しんでいただけたらと思います.いろいろな数学を取り上げ文字に起こすことで,『数学とはどんなものか?』ということを,読者の方と一緒に考えていきたいと思っています.本人は,整数論という数学の一分野を研究しています.1977年生まれ.
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連載コラム『数学者的思考回路』
(裳華房ウェブサイト,共著)

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大栗さんのウェブマガジン『数学の言葉で世界を見たら』
以前に大栗博司さんの書いた『大栗先生の超弦理論入門』というブルーバックスの本を紹介しました。今日はその大栗さんが連載している

数学の言葉で世界を見たら

というウェブマガジンを紹介します。

これがどんな連載かを知るには、まず何よりこの連載の第0回、

『はじめに ― 娘に語る数学』

を読んでいただくのがいちばんです。示唆に富む内容だと思います。是非読んでみてください。

ここに書いてあるように、大栗さんは物理学者です。超がつくほどの一線級の研究者で、本拠地のカリフォルニア工科大(通称カルテク)に加え、東大のカブリIPMUという研究所にも籍をおいて活動しています。このような方から数学を語っていただけるというのは、本当にありがたいことだと思います。現在までのタイトルは次のようになっています。

  ・はじめに - 娘に語る数学
  ・計算されたリスクを取ること
  ・基礎から考えること
  ・大きな数を恐れないということ
  ・素数のふしぎ
  ・無限世界と不完全性定理
  ・宇宙のかたちを測る 

●   ●

ここで僕は、物理学者から見た数学という点に注目したいと思っています。ご本人も上記の連載初回に『この連載で語るのも、使い手の立場から見た数学だ。』と断っています。大栗さんは、とある講演(youtube)のスライドで、物理学について次のように書いていました。

物理学の使命のひとつは
自然界の基本法則を発見し、
そのもっとも奥深い真実を
見極めること。

そのように物理を探求している大栗さんにとって、数学とはどのようなものなのでしょうか。上記の連載初回では、次のような見解が表明されています。

言葉を扱う文学や外国語は文化系科目、数学は理科系科目とされるが、僕は数学の勉強は言葉を学ぶようなものだと思っている。数学とは、英語や日本語では表すことができないくらいに、物事を正確に表現するために作られた言語だ。だから、数学がわかると、これまで言えなかったことが言える、これまで見えなかったことが見える、これまで考えたこともなかったことが考えられるようになる。(下線は僕が引いています.)

数学の大切で本質的な面が正確に指摘されていると思います。

●   ●

自然な問いは、では当の数学者は数学をどのようなものと考えているか?ということでしょう。と言っても、ここで僕が数学者の見解を代表するなんてことはもちろんできません。ですので、大栗さんを引き合いに自分の見解を言うなど分不相応にも程がありますが、恥を省みず僕個人の考えを書いてみます。(たたき台になったら嬉しいです。)物理学を始めとする多くの自然科学が我々を取り巻く自然界の理解を目標としているのに対し、数学はあくまでも

人類が「理詰めで考えて分かる」ことにはどのようなものがあるか?

を追求しているように僕には思えます。以前に吉田輝義さんの論説を紹介しましたが、その論説にあるように、数学の理解は、結果として他の学問分野に応用される考え方や方法を提供することはあっても、それ自身は、役に立つかどうかはひとまず脇に置いた、無目的な活動なのかなと思います。

数学のそのような側面について、次回、もう少し具体的に説明してみたいと思います。

●   ●

ところで、驚きのニュースを目にしました。星雲賞という"日本のSF及び周辺ジャンルのアワードとしては最も長い歴史を誇るSF賞"の「ノンフィクション部門」に、『大栗先生の超弦理論入門』がノミネートされたとのこと。受賞となればブルーバックス史上初となるそうですが、最新の科学を専門家が解説した本がSF賞にノミネートされるなんて、なんと愉快なことではありませんか。大栗さんも喜んでおられるそうです。おめでとうございます。


(追記)
大栗さんは『大栗博司のブログ』というブログも書いておられて、多面的でなかなか興味深いです。最近、日本では国立大学の改革が話題になっていますが、これについて大栗さんの次の記事も含蓄があります。

  ・日米大学の比較
  ・内側から見た米国の大学入試制度

遥かな彼の地、という気持ちにもなりますが、アメリカ型が全てよいわけではありませんし、日本の大学の持つ強みもよく検討しながら、見習うところは見習って一歩ずつよいものに変えていくしかないのでしょう。大学入試制度の方のコメント欄に、大栗さんが「日米の大学入試の経験では、主観的な判断基準の米国の制度のほうが、受験生への負担が大きいと感じています。」と書いているのも興味深いです。
本などの紹介 | 03:21:53 | トラックバック(0) | コメント(0)
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